Kiiコンソーシアム「IoT支援プログラム」第1回オープンセミナーが開催されました

2016/10/04

カテゴリー:イベントレポート

去る10月4日、東京・五反田のDNP五反田ビル1Fホールで「Kiiコンソーシアム『IoT支援プログラム』第1回オープンセミナー」が開催されました。セミナーは3氏による講演、パネルディスカッション、『IoT支援プログラム』参加企業の自己紹介ライトニングトークの3部構成。大会場の多くの席が埋まる盛況となり、IoTによるビジネスイノベーションへの関心の高さを改めて実感する催しとなりました。

■講演1:IoT 時代の価値共創を目指したモノ・コトづくりへの挑戦最新動向

最初にご登壇いただいたのは、前シスコシステムズ合同会社専務CTOで一般財団法人インターネット協会副理事長の木下剛氏。昨年までCisco本社Internet of Everything(IoE)イノベーションセンター初代日本センター長としてご活躍されていたご経験も踏まえ、IoTでビジネスとテクノロジーが一体化するこれからの時代に期待される価値創造について、「オープンイノベーション」と「次世代IT」というキーワードでお話を進められました。

  • 木下剛氏

○オープンイノベーションは外部とのコラボレーションに進化

木下氏は冒頭で「IoTについての理解がこの2年くらいの間にだいぶ進み、従来のモノのネットワーク(M2M)という捉え方から、特にグローバルでは事象のデジタルデータ化や、アナリティクスを経てサービスへと発展させるものと考えられるようになった」とし、今年の「世界経済フォーラム」レポートを引用、2025年にIoTは日本のGDPの約2倍に当たる1100兆円規模の経済規模と予測されていることを示しました。またNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「オープンイノベーション白書」を紹介しながら、競争激化する現在のビジネス環境の中で、オープンイノベーションが進化しながら続いており、競争激化するビジネス環境の中で淘汰されないように企業はオープンイノベーションを積極的に推進すべきであると指摘されました。

オープンイノベーションの進化は、内部的イノベーションを進めるために外部から情報を取り入れることにとどまらず、今ではベンチャー企業による資金の外部調達や、大企業の新規事業を最初から外部企業と一緒に立ち上げるというような、外部とのコラボレーションがグローバルなトレンドになっているということです。このコンソーシアムのような企業の結びつきがより重要になっているということですね。 一例としてシスコシステムズ様の例も挙げられました。もともと売り上げの13%をR&Dにつぎ込むほどイノベーション推進に熱心な同社ですが、社内開発を補完するための企業買収と同時に、IoTやクラウドを始めとする先端的な部分はパートナーや外部企業とのコラボレーションをを進め、オープンイノベーションに努めているのだそうです。

また米国の例として、官民一体の「米国製造イノベーションネットワーク(National Network for Manufacturing Innovation:NNMI)プログラム」も紹介されました。米国ではアジア勢に席巻された製造業の拠点地域(軍需と航空業以外)の雇用・経済・産業を改善するために、1980年代頃に栄えた製造業拠点地域に、デジタル産業のオープンイノベーションのハブを設けています。シリコンバレーにもITのためのオープンイノベーション拠点があり、ウェアラブル技術、ヘルスケア技術、センサ技術やエネルギーハーベスティング技術など先端的な取り組みが行われ、企業のスタートアップにとどまらず、他企業とのコラボレーションによる事業展開が進められているそうです。

このような取り組みが全米に広がり、グローバルにも取り組まれる中で、国内企業も、特にIoTの将来性ある市場では、イノベーションのフレームワークに外部の組織やユーザーも含めて一緒にやっていく取り組みが非常に重要であることを強調されました。

○次世代ITの活用が将来のカギを握る

もう1つのキーワードが「次世代IT」です。これはクラウド、モバイル、AI、IoT、セキュリティといった領域の技術のこと。こうした次世代ITをビジネスで駆使する企業が世界で競争力を増していると木下氏は言います。サプライチェーンの世界でのトップ25社(ガートナー社)でランキングされている国内企業はトヨタだけですが、その他の世界の企業はさまざまな業種の企業が名を連ねています。それらの企業は共通して、次世代型のITを活用していると言います。中でも国内企業が現在着手しやすいのはクラウドとモバイル技術であるとし、少なくともそれらを活用するIT戦略を持つことが成長のカギであるとしました。

またIoTに関しては、単なるM2Mの相互接続が話題だった時代から、今では1日あたり550万個のIoTデバイスが生まれるようになり、膨大なデバイスとそれがもたらす巨大データをどう活用するかを真剣に考える時代へと変わっています。またデバイスは世界中に分散しており、企業もこうした環境を踏まえたサービスを提供していかなければなりません。この新環境を考慮したIoTのサービス基盤が今こそ求められていると木下氏はいい、現在のところは3つのプラットフォームが存在するとしました。1つはM2Mの進化型、もう1つはモバイルなどの目的特化型、そしていわゆるIoEを体現するような汎用型です。

どのようなプラットフォームを使うかはデジタルサービスをビジネスにするときには非常に重要です。木下氏はIT業界ではコンシューマ系のサービス、ビジネスに現在のところフォーカスしており、メーカーでは産業系のサービス、ビジネスにフォーカスしているのが現状だとし、Kiiは、双方のフォーカス領域にも対応するバランスが良いと評価していただきました。なお、米国のある調査会社では、プラットフォームを自前で構築するのに比べ、外部業者が提供するプラットフォームを利用するとコストが半額になると試算しているそうです。 さらにセキュリティにも簡単に触れ、ビジネス成長のための新時代ITにも対応するよう、戦略的に活用していくべきであるとしました。

木下氏は「オープンイノベーションの進化の波に乗り遅れないことと、次世代ITの活用への取り組みが、これからの企業成長のカギになる」と改めて指摘して講演を閉じました。

■講演2:IoTプロトタイピングとIoTプロデューサーの重要性

続いて登壇されたのは、「IoT系ものづくりができる経営コンサルティング会社」を標榜する株式会社CAMI&Co.(キャミーアンドコー)の代表取締役、神谷雅史氏です。同氏はかつて日本ユニシス、アクセンチュア戦略部門でご活躍され、現在KDDI∞ラボの社外アドバイザーもお務めになっておられます。CAMI&Co.の強みは、IoTの製造とマネジメントが両方できるところ。特にマネジメントができるのは日本で数社しかないとのことで、今回はIoTのプロトタイピングとプロデューサーの重要性に関してお話しいただきました。

  • 神谷雅史氏

○IoTプロトタイピングとは

「IoTは幅が広すぎます」と語る神谷氏は、IoTは今までの技術の総合体であるとし、「先行事例もないサービスを作り出すとき、作り出そうとするものの全部を一度にやろうとするのはリスクが大きい」という認識を示されました。大学時代の恩師の先生が常々「針の穴から世界を見よ」とおっしゃっておられたそうですが、大きな世界があるのはわかっていても、いきなりそれを目指すのではなく、針の穴に当たるような小さな部分から手掛けないと失敗するという意味だそうです。それがサービスやプロダクト開発にも当てはまり、まずは簡単なもの=プロトタイプを作り、それによって上司や外部の人などを説得して動かすことから始めるのが適切だと指摘されました。

口で言っても門前払いになるようなアイディアでも、そこにモノがあると、周りの人の反応が違います。神谷氏は、実際に動くプロトタイプによれば、上司を説得することもできるし、ユーザーの反応を検証したり、早い段階で問題を発見できるようにもなると言います。コスト計算ができることも重要です。また、デモを資金調達に繋げたり、展示会でのプロモートも可能になります。

次にプロダクトのリリースまでの道のりを簡単に解説されました。課題から要件を定義して、最初のプロトタイピングが始まります。それができたら次は評価です。最初のプロトタイプで十分なことはほとんどなく、大抵は2〜3回プロトタイピングをやり直すことになるそうです。プロトタイピングと検証のループを繰り返して洗練させて、最終的に品質の高いプロダクトになるというわけです。

ただしこのループの性質は、上司や仲間に見せる段階、VCなどへのデモや展示会向けの段階、リリース前の量産段階のおよそ3つの段階で違うとのことです。少人数に見せる段階では、必要以上に作りこまず、最小限の機能でプロトタイプができるまでのスピードが重要。もっと多くの人々に見せる段階では、デザインも重視し、UXやコストなどをユーザー視点で考え、プラットフォームやクラウドの利用も意識しつつ、機能をブラッシュアップする必要があります。さらに次の段階では、量産設計をしっかりと考慮し、投資対効果などよりビジネスに即した評価ができるようでなければなりません。これらの3段階でそれぞれループを繰り返して、最終的なプロトタイピングが完了するということです。

次に、実際にこうしたループを回して開発した具体例として、リクルートテクノロジーの女性向けウェアラブルデバイス「Lily」が紹介されました。スマートフォンからの通知をリストバンドで受け取るデバイスなのですが、最初の注文は「Apple Watchを作って欲しい」というものだったのだそうです。しかし許される期間は数ヶ月。これに対して、神谷氏は機能ターゲットを絞り切り、早期のプロトタイプ作成を逆提案しました。その結果、3回の作り直しで3ヶ月でのプロトタイピングができたそうです。このほか、FAシステムとAWS IoTを連携させる「ミニチュア工場」を製作した事例も紹介されました。

さらに「プロトタイプで重要なこと」として次のような項目を挙げられました。

  • 小さく始める(5ロットくらいから)
  • 予算をしっかりとる
  • 目的、ターゲットを明確にする
  • 無理なスケジュールにしない
  • 後戻りしないようにしっかり計画する
  • 慎重にチーミングする
  • 素人アドバイザーの意見は無視する
  • プロダクトデザイン、動画などの見栄えはわりと重要
  • コスト、納期をしっかり計画する
  • インターネットとの接続、無線接続、プラットフォームを検討する
  • 量産を見据える、量産時のコストシミュレーションをする
  • 販売チャネルも意識する

○IoTプロデューサーの役割

このように多くの注意ポイントがあるため、プロダクトのリリースまでには高度なマネジメントが必要になります。しかし問題はやはりIoTに必要なスキルが幅広く、実際にマネジメントできる人材がいないのが悩みです。神谷氏は総務省の調査結果を示しながら「IoT導入率はアメリカの5年遅れ」である事実や、調査会社資料から国内IoTユーザー企業の約半数がIoTを限定的にしか導入していないことを指摘し、マネジメント能力の欠如がなかなか本格的な導入が進まない要因の1つとしました。

神谷氏は総務省があげるIoT人材のスキルもスライドで紹介し、「課題発見・コンサルからビジネスモデル、基盤デザイン、データ解析、制御系システムの理解、セキュリティ、UI/UXデザインまで、全部のスキルが必要。これを1人で備える人材はまずいない」としました。エンジニアに欠けがちなビジネス面でのスキルを埋め、調整する立場の人材としてIoTプロデューサーが必要となるということです。そのような人材もなかなか得られないでしょう。神谷氏は「IoT人材を育成していくしかない」と結論づけました。ただし総務省調査によれば、世界でも日本はIoT人材育成の課題認識が高いという結果も出ているそうです。

拡大するIoT市場にはビジネスチャンスがいくらでもあります。小さくてもビジネスチャンスをものにしていくことで、IoTプロデューサーのスキルも高まっていくのではないでしょうか。

■パネルディスカッション

弊社の鈴木がモデレーターとなり、ご講演者の皆様と大日本印刷の生田大介氏が参加され、主に予算とコスト、ROIについての議論が交わされました。特に3番目の講演者である稲田修一氏が「ROIが出るものから始めると良いが、本格的なチャレンジではROIが出ないかもしれない。しかし大きな価値創造につながる」とおっしゃっていたのが印象的でした。

  • 左から鈴木、生田様、木下様、神谷様、稲田様

■講演3:IoT活用と価値の創造

最後に講演されたのは、情報未来創研代表で東京大学先端科学技術研究センター特任教授でもある稲田修一氏です。2012年に東京大学先端科学技術研究センター特任教授に就任し、IoT/データ活用によるビジネス革新や価値創造について研究され、2015年からコンサルティング業務を開始しておられます。

○IoT活用は価値の発見や創造がポイント

冒頭で稲田氏は「IoT活用で重要なのは、えっ、こんなデータも収集できるんだ。こんな活用もできるんだ」という気づきだと語りました。ツールや製品を起点に考えがちな日本企業ですが、ビジネスや社会の課題を起点に、IoT活用の価値を発見することの方が重要だという指摘です。その知見の例として、「人と人の面会を検出したり、体の揺れと向きを検出する名札型センサー」や「携帯型脳活動計測装置」、「道路や鉄道などの社会インフラの変化状況を、自動車が走行しながら計測するインフラモニタリングシステム」などを紹介されました。今まで計測が難しかった事象を計測できることにより、新しい価値の創造が可能になっているのです。例えば、「名札型センサー」の活用によって、人間の活動度合いや組織の活気度合いを数値化し、人事施策の評価に活用する時代になっています。

またチャットを活用したシステム管理・運用業務の効率化についても紹介されました。そのポイントはチャットをログの形で残すことです。管理・運用業務でのトラブルやそれがどう解決されたのかなどの情報を残すことができます。これによって、サイロ化されがちな業務を可視化でき、またそれぞれの社員の業務への貢献度を割り出すことも可能になります。また、人間の代わりにチャットを行うchatbotの活用がコミュニケーションや業務の一層の効率化につながる可能性も示されました。ログの蓄積とその活用に関する経験がたまっていくと、管理・運用業務の自動化の推進という大きなイノベーションにつながります。

さらに通信教育のビジネスモデル改善の例も紹介されました。従来の通信教育会社は教材を子供に送り、勉強の結果を提出させて添削しますが、子供からの提出率は意外に低い割合なのだそうです。教材の提出率が低いことが、添削スタッフのコスト削減につながり通信教育の会社の利益につながっています。

この状況にタブレットを持ち込むと大きな変革が生まれます。まず、タブレットで問題を解けばその添削作業はコンピュータが行いますので、提出率が上がっても添削コストには大きな変化は生じません。また、子供の学習データを蓄積し、データ分析を行うことで、子供一人ひとりにカスタマイズした教材を選択することが可能になり、より効果の高い教育を実現できるようになると考えられます。データ活用によって、子供の学力や行動特性に見合った教材の「マッチング」が可能になるのです。

データを活用したマッチングの自動化は、その他にも就職、人材派遣、不動産売買、中古車売買、学校選択、婚活、ビジネスのアイディア出しなど、幅広い分野のビジネスを変革する可能性があると稲田氏は強調しました。

○データは価値発見・創造ツール

稲田氏はさらに「データは重要な価値発見・創造ツール」であるとし、データは気づきの誘発、意思決定の迅速化、マッチングの最適化、全体最適の実現など人の知的活動を強化すると述べました。それはビジネスや社会のイノベーションを加速します。

ただし、多くの新規IoT活用案件では「要件定義が難しい」ことも指摘されました。今までにない製品やサービス創造の要件を導き出す難しさのことです。従来のように要件定義できない場合は、ユーザーとベンダーが一緒にビジネスやサービス利用の視点から、何が価値なのかを話し合う必要があると稲田氏は言います。その過程を通して、どのようなシステムが必要なのかのコンセンサスができ、そこで要件に関する共通理解が生まれます。何が価値なのかを考えるためのヒントとして、稲田氏は「ある企業では、製品開発をする前にプレスリリースを書いてみるようにしている」ことを紹介されました。開発側の視点ではなく、それを受け止めるユーザー側の視点、あるいは売る立場の視点からメリットを考えてみるわけですね。そうすると別の視点から製品の価値を捉え直すことができます。ビジネスや利用者の視点からシステムを考えると、そこに新しい価値の発見や、価値創造のためのきっかけがありそうです。

また事例として、AWS上にIoTデバイス向けの通信プラットフォームを構築してユーザーに提供しているソラコムの事例を引き、クラウド利用で固定費用を大幅に少なくしたこと、パートナー制度で回線リセール、デバイス開発、システムインテグレーションは外部リソースを活用し、ビジネスの早期拡大と多様な価値創造ができるようにしたことがポイントとして指摘しました。また、南アフリカの保険会社Discoveryが、健康管理プログラムで健康を改善するとポイントがたまる制度の活用で、事業を急成長させることに成功した事例も紹介されました。IoTや行動経済学、ゲーミフィケーションなどに基づくデータ分析結果を活用し、一人ひとりの加入者にマッチした報酬や報酬を提供するタイミングなどを最適化しているとのことで、結果として保険加入者の健康増進にもつながっています。このように、価値の発見・創造という面で、IoT活用はビジネスや社会に大きく貢献できるわけです。稲田氏は「価値創造の対象が変わると価値が変わる、視点を変えると新しい価値が創造できる」と言います。

○「Revenue Sharing」とエコシステム

さらにもう1つ、モバイル開発企業と浄水器メーカーの協業で、浄水器のフィルターの適切な交換時期をスマートフォンに通知するシステムを提供したところ、交換フィルターの売り上げが増大したという例を挙げられました。ポイントはこの2社が交換フィルターの売上増に伴う収入をシェアしていることです。リスクと利益をシェアする「Revenue Sharing」というモデルなのだそうです。そのモデルにより開発者とユーザーの利害の一致という新しい価値を創造しているということです。

稲田氏は、「価値発見なしにIoT活用をやっても良い結果は出ない」とし、まずは価値を見つけること、あるいは創造することが大切だと強調しました。「自分だけが儲けるという考え方ではなく、社会に貢献するという考え方で価値発見・創造をしてほしい。ROI中心の価値観とは異なる価値観が必要」であると述べ、エコシステム構築の重要性も指摘し、ご講演を閉じました。

■ライトニングトーク

最後に、コンソーシアム参加企業からの自己紹介の時間を設けました。短い時間ではありましたが、次の企業の方に、自社のビジネス概要や強みについてお話しいただきました。

  • サイプレスセミコンダクタ株式会社
  • サイレックス・テクノロジー株式会社
  • 株式会社システム計画研究所
  • 大日本印刷株式会社
  • 三菱UFJリース株式会社
  • 株式会社ユニフィニティー
  • リコージャパン株式会社

初めての試みのセミナーでしたが、短い時間の中で大変濃密な内容のご講演とパネルディスカッションとなったと思います。ご来場頂きました皆様、誠にありがとうございました。

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