第7回 Kiiコンソーシアム総会「変わる製造業、効果を生み出すIoT化のために」が開催されました。

2017/12/28

カテゴリー:イベントレポート

去る2017年11月22日(水)16時より、東京・五反田のDNP五反田ビル内のホールで「第6回 Kiiコンソーシアム総会」が開催されました。今回のテーマは「変わる製造業、効果を生み出すIoT化のために」とし、製造業のIoTに詳しいお二方のご講演とパネルディスカッション、メンバー企業からの新商品・サービスの紹介が行われました。

■製造現場の改善に生かせるIoT投資検証環境を提供

  • 株式会社三菱総合研究所 コンサルティング部門
    経営イノベーション本部 ものづくり戦略グループ 主任研究員
    田中 理史 氏

株式会社三菱総合研究所(以下、三菱総研)は日本を代表するシンクタンクの1社。田中氏はなかでも企業経営分野とITサービス分野を専門とするコンサルタントです。同社では「ものづくり革新支援」事業の一環として「ものづくり競争力強化支援サービス」を提供しています。このサービスのポイントは、製造業でIoTに取り組むにあたり必要となる先行投資(設備や情報化のための投資)を軽減することにあります。

そのサービスの中核にあるのは「M-M-CPS」(MRI-ものづくり-Cyber Physical System)と同社が呼ぶIoTの検証基盤です。これにはMES(製造実行システム)、PLM/BOM(製品ライフサイクル管理/部品表)、APS(生産計画・製造スケジュール管理)、BI(ビジネスインテリジェンス/経営情報管理)、PIMS(操業データ管理システム)、LIMS(分析試験情報管理システム)、SPC/SQC(統計的工程管理/統計的品質管理)、CMMS(設備保全管理システム)の各システムが包含されており、これを利用することで、自社で検証環境を構築することなく、IoTへの取り組みの効果検証ができるとのこと。システム・ものづくりのスペシャリスト集団である横河ソリューションサービスと提携し、ほぼ全業種に幅広くサービス提供できてグローバル対応も可能なのだそうです。

「IoTへの取り組みには先行投資が必要。具体的な効果が見えてきて初めて事業化できます。しかし投資効果はなかなか金額的に算定しにくく、キャッシュフローベースのシミュレーションができないために投資に踏み切れないケースが多いようです。そこでこの環境でIoTの取り組みを試行頂くことによって、投資対効果を金額的に視覚化していただきたい」。

「経営者向けIoTスターターキット」の検証事例

これまで同社には、IoT取り組みのための準備としての情報収集や、他社の動向などの比較検討による取り組み実施判断などの相談が多かったとのこと。しかし現在ではユーザー企業のデータやシステム、IT利活用状況などのケイパビリティの確認が済むとともに、戦略課題や内部・外部環境の分析を済ませてIoTの試行評価や課題抽出の段階に入っています。そこで同社は「ものづくり競争力強化支援サービス」の一環として「経営者向けIoTスターターキット」を提供し、IoTへの取り組みを手軽に体験できるようにしました。このIoTスターターキットの事例として、田中氏は製造現場での設備稼働改善に役立てたケースを紹介されました。

製造現場では、機械から計測可能な稼働状況データは収集可能ですが、設備の停止要因は現場で手書きするメモから把握するしかなく、正確な稼働状況と停止要因分析ができないことが多いのが現状です。
そこで現場でのメモをタブレットからの入力に置き換え、機械からの稼働データに現場メモデータを統合するデータベースをM-M-CPSを利用して構築し、スターターキットに含まれる「見える化ツール」によって本当の稼働状況を可視化することができるそうです。これにより、設備停止時間とその要因が精度よく特定できるようになります。設備停止の原因が設備要因なのか、作業員の操作によるものなのか、それはどの部分やプロセスなのかがわかると、改善ポイントが明らかになり、対策も立てられるというわけです。

スターターキットには「改善効果シミュレーションツール」も含まれており、改善をすればどんな効果が生まれるのかが確認できるそうで、今後この部分の拡充も考えておられるとのこと。PDCAをリアルタイムで回すことができ、製造現場の改善が短期間で行えるようになりそうです。

なお、このIoT取り組み体験のタブレットへの入力と蓄積には、大日本印刷による「Device Backend by Kii」ソリューションが活用されています。最新データセンターを活用したサービスを利用でき、バックエンドのAPIやSDK、ドキュメントが提供されていることと、月次費用で利用できることが評価された要因でした。

「IoTは製造現場のPDCAを短サイクルで回す鍵になります。ただしそのためには製造現場でのメモ書きなどのアナログ情報をデジタルに置き換えることが必要。当社は「経営者向けIoTスターターキット」により、アナログからデジタルへの転換を促進していきます。また、『ものづくり競争力強化支援』事業はお客様との『共創』を推進しようとしています。まずはトライアル案件を通してお客様の中にコンサルできる人材を育てていただき、さらにお客様からソリューションを提供するその先のお客様にIoTを試していただけるように、輪を広げる取り組みをしていきたい。お客様とのパートナーシップを結び、コンサルのノウハウを共有しながら事業推進していく中で、日本のものづくり全体の競争力向上に結びつけられれば素晴らしいと考えています」。

■最新IoTのビジネスチャンスは5領域

  • 一般財団法人インターネット協会 副理事長
    同IoT推進委員会 副委員長
    木下 剛 氏

「2017年はIoTが調査・企画の段階から、トライアル実施の段階に入っています」と木下氏は冒頭で述べました。「この4、5年でIoTビジネスはやっと実態が見えてきた。今年の目玉はLPWAで、製造業の工場をコネクテッド環境に変えていくための通信コストのハードルが下がったことが注目されますが、その一方で、製造業以外にも農業、物流、公共サービスなど新しい事例が出てきて一部はサービスが定着しているように、いろいろな進展があった年でした。世界的にもIoTは引き続き隆盛で、ハードウェア、コネクティビティ、ソフトウェア、サービスの全レイヤーが成長しています」。

IoTビジネスの注目領域

木下氏は「漠然とした検討段階(PoC)から、あらかじめビジネス上の想定効果を明確にして、どのようにIoTを活用していくかに取り組むアプローチに変わってきていて、効果を上げている事例も出てきている」とし、「基本的に顧客がプロジェクト化しやすい領域」として次の5領域を挙げました。

  • 業種別IoTサービス・ソリューション
  • IoTインフラ・プラットフォームインテグレーション
  • 製品のIoT化支援
  • IoTセキュリティ
  • データ流通・利活用関連

業種別IoTサービス・ソリューション

IoTへの取り組みがPoC段階から抜け出し始めたのには、やはりIndustrie 4.0のインパクトがあるようです。これを受けた経営層が、IoT推進の方向に舵を切っており、特に製造業、次に医療機器のモニタリングやメンテナンスに関わるヘルスケア領域が進んでいます。

PoC段階からの進展には、IoT導入目的が整理されてきて、経営層の目にも明確になってきたことが大きいようです。経営層が気にするのはQCDSS(クオリティ、コスト、デリバリー、セーフティ、セキュリティ)の5つです。この5つの課題に対して、プラスになると考えれば、IoTであれ何であれ、投資を考慮します。品質担保、在庫最適化、短納期化、人材難・省人化の中での安全性確保、情報漏洩対策などの課題解決に、IoTが活用できるかもしれないと考えられるようになりました。

IoT導入推進目的としては、「新たな価値創造(コンシューマープロダクトなど)」「生産性向上・省力化(製造業稼働率向上・自動化、農業、ドローンなど)」「ライフイノベーション(医療・健康)、ビジネスイノベーション(サービス、シェアリング型のサービスなど)、「資産の最適化」の5つのポイントが挙げられました。世界的に見ると、産業分野のIoT、スマートシティ、スマートエネルギー、コネクテッドカーなどの分野でプロジェクトが進んでいるとのことです。

また、木下氏は「ものづくり系のIoTには2つの方向性がある」とし、「製品のスマート化」と「生産技術の革新(スマートマニュファクチャリング)」の2つの方向に進んでいると言います。特に今回のテーマである製造業にかかわるスマートマニュファクチャリングの方向では、特に日本では現場に密着した形でIoTが使えるかどうか考えようという、スマートファクトリー(製造現場の生産性向上)に着目した取り組みが多いということです。一方、グローバルでは加えて、サプライチェーンや営業系も含めた全社的・全体的なデジタルトランスフォーメーションに向かう取り組みも進んでいるそうです。
ただし木下氏は個人的な意見として「産業分野のIoTを牽引したGE社のCEOが変わり、現在は足踏み状態に入ると言われていて、SAPやIBM、マイクロソフトもベンチャーを買収していますが混沌とした状態があと2年くらいは続く」と予想します。製造分野や研究開発、CRMとか業務単位のデジタル化は進むものの、それらを一気通貫するデジタルトランスフォーメーションはいろいろな意味でおおごとになるため、もう少し時間がかかりそうです。

なお、製造現場改善に関して、特に日本は紙を利用する業務プロセスが多く、デジタル化が遅れている点が指摘されました。まずは業務をペーパーレス化して、人に付随した情報をシステムで扱いやすくすることが重要です。加えて、現場では人手不足から社員以外の働き手が多くなっていて管理上の課題になっていることも課題に挙げられました。これにはIoTを利用したオペレーション状況の把握などが役立つのではないでしょうか。
結論としては、現場の視点からの業務負担の軽減を実現しながら、QCDSS改善に結びつく提案であれば、ユーザーに受け入れられる可能性が高いということです。そのような提案が、ビジネス化を促進していくことになります。

IoTインフラ・プラットフォームインテグレーション

IoTに期待する効果は製造業では明らかになってきている一方で、Kiiを含むIoTプラットフォームが成熟してきています。IoTプラットフォームと呼ばれる製品は特定分野向けのものも含めると現在360以上存在するということですが、それらは大別すると、各種IoTデバイスの接続管理とデータ収集機能を提供する「コネクティビティサービス」と、IoTサービスを実現するデータ管理と分析エンジンおよびAPIを提供する「AEP(Application Enablement Platform)」の2つとなります。
木下氏は、すでにどのプラットフォームを使うとどういう効果があるかがわかってきている段階だと分析しています。特に注目される効果としては、IoTシステムの効果検証が早期に行えるところです。
スクラッチ開発の場合とプラットフォームを活用した開発の場合の比較では、スクラッチで2年半かかるプロジェクトが1年3カ月に短縮できるという調査例が紹介されました。ソリューションとして納得いく結果が出るまでには、PoCからトライアル開発、効果検証までのプロセスを少なくとも2、3回は繰り返す必要があるため、現在はスクラッチ開発よりも、プラットフォームを活用して短工期化し、早期に効果の測定ができるようにするほうがトレンドになっているそうです。
また、既存システムと連携したIoTシステムを構築するには、やはり現場で稼働しているシステムの知見がないとうまくいかないこともわかってきています。現場と切り離されたIoTシステムはありません。既存システムの構築や運用にあたるインテグレータに、IoTシステムの構築も任せたほうが得策と考えるユーザーも多くなっているようです。

製品のIoT化支援

製品のIoT支援に関しては、当初はコンシューマー領域の製品に注目されていましたが、標準化されていなかったため、いったん下火になってしまいました。現在ではインダストリー系のほうが主流です。しかしAIスピーカーなどの登場により、またコンシューマー系の製品に注目が集まるようになりました。木下氏は「IoTデバイスの機能を利用して音声などのユーザーインタフェースを、APIの組み合わせで使いやすいものにできるのがポイント。そうしてより使いやすい使いやすい製品に仕上げることで、コンシューマー向け製品のIoT化が今後再び盛り上がるのではないか」と予想した。

IoTセキュリティ

IoTのビジネス化ではセキュリティが避けて通れません。WannaCryやMiraiなどのようなIoTを脅かす攻撃が、今後も巧妙化、増加する可能性があるからです。IoTシステムと従来のITシステムと違うのはエンドポイントの数です。従来は従業員の数の2倍から3倍のエンドポイントとの接続を考えればよかったのですが、IoTでは少なくともその10倍以上のエンドポイントと接続しなければなりません。またドメインを超えたデータ活用が必要になることも多いと考えられ、それに対応できるスケーラビリティと安全性が両立できなければなりません。
そこで一番大きな問題になるのは認証です。従来のITシステムならユーザー・端末認証に1秒かからなければ十分だったのですが、工場内での生産関連デバイスの認証には数百ミリ秒でも遅すぎることがあります。そのような認証性能を実現しつつ、きめ細かいアクセス制御ができなければなりませんから、自律分散処理などの技術を利用しながら、システムのレベルで堅牢なセキュリティを構築する必要があるでしょう。
こうした特有のセキュリティ確保の難しさとともに、製造現場での作業安全性や機密保持などの改善をともに図っていく必要があります。ユーザー企業でもセキュリティやセーフティに関する提案を求めているところのようです。

データ流通・利活用関連

データ流通・利活用は将来的には大きな市場になるはずですが、木下氏は「データ流通・利活用関連の領域のビジネスは、東京オリンピックが終わる頃から立ち上がるのではないか」と見ています。ただし今年は、価値ある情報を取り出して流通させるために、公正で信用できるデータを流通させることを目的に、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室、総務省、経済産業省におけるワーキンググループの検討を踏まえて「データ流通推進協議会」が設置されました。これはデータ流通と利活用への大事な一歩と言えそうです。
また総務省や経産省では、地域に密着したIoT活用のための計画や施策を実施しており、将来的にもデータの利活用がベースとなるスマートシティ構築への取り組みが行われていきます。木下氏は「自治体と協力し、一緒にIoT化の提案が可能」なのではないかと示唆しました。

■パネルディスカッション

2つのご講演に続き、木下氏、田中氏、Kiiの鈴木尚志、大日本印刷の斉藤憲史氏によるパネルディスカッションが行われました。短い時間でしたが、各氏のIoT普及への思いとともに、さまざまな視点での意見や取り組み状況が語られました。それぞれの立場で真摯に課題解決に取り組まれている様子を垣間見ることができたのが、印象的でした。

■メンバー企業の製品・サービスご紹介

今回は、次の3社による製品・サービスが紹介されました。

【サイプレス セミコンダクタ株式会社】

マイコンの新製品「PSSoC6」が紹介されました。2つのCPUを搭載し、消費電力を抑えて高パフォーマンスを実現したそうです。BLE5.0対応、静電容量方式のタッチ操作ができる専用回路、セキュリティのための暗号化・乱数発生回路も搭載されています。ウェアラブル製品などに実装し、センサー入力、処理、通信をオールインワンで提供できます。2マイク搭載による180度音源方向推定デモ装置と、温度・気圧・GPSによる位置情報を捉える、指紋認証センサー付きのデモ装置が披露されました。

【株式会社システム計画研究所/ISP】

AIアルゴリズムを得意とする同社の新製品が紹介されました。物体の外観(正常パターンのみ)を学習し、独自アルゴリズムで正常/異常を判別するAIエンジン、使用場所や目的に応じて検知条件を変えて異常検知できる監視カメラ向けAIエンジン、コンクリートのひび割れ検出ができるAIエンジン、圃場のデータなどから農業生産物の収量予測などができるAIエンジンを、画像や動画で説明していただきました。ごく少量のパターンを学習するだけで、様々な判別が精度よく行えるところがポイントです。

【株式会社CAMI&Co.】

AIとIoTのコンサルから制作・教育までのトータルソリューションを提供している同社はこのほど東京・五反田に移転し、オープンなものづくりスペース「ファブリケーションスペース【IoTLaB】」を立ち上げたとのこと。新事例として、大日本印刷と米沢栄養大学との共同プロジェクトによる「ダイバーシティ研究環境実現イニシアチブ産学連携プロジェクト」(文部科学省採択)の一環で製作した「スマホと連携した調味料調合機」、バイキング形式の食堂で皿に乗せた料理を識別して栄養バランスなどのアドバイスを行う「スマート皿」が紹介されました。またAIシステムの開発見積りサービスについても触れられました。さらに、教育事業としてIoTスクールを企業向けに展開し、チームでプロトタイプづくりを体験する授業などを行っているとのことです。

Kii Cloud

前の記事< | トップへ戻る |

無料トライアル