第6回 Kiiコンソーシアム総会「センサー・ゲートウェイ特集」が開催されました。

2017/06/05

カテゴリー:イベントレポート

去る2017年4月14日(金)16時より、東京・五反田のDNP五反田ビル内のホールで「第6回 Kiiコンソーシアム総会」が開催されました。今回は「センサー・ゲートウェイ特集」と銘打ち、5社の方にそれぞれ20分間の講演をお願いいたしました。ご講演のポイントを以下にまとめます。

1 IoTデバイスをクラウドに接続しやすくする3つの方策

  • サイプレス・イノベイツ株式会社
    戦略マーケティング統括部アナログ戦略 部長 岩田宏之氏

世界の半導体大手、サイプレス社のチップで日本の通信環境の進化を促進しようと注力するサイプレス・イノベイツ株式会社の岩田氏は、まずIoTデバイス市場の状況から講演を始められました。ちょうど今年、ワイヤレスデバイス市場の主役だったスマートフォン(世界で年間約10億台出荷)とPC・タブレット(合わせてスマートフォンとほぼ同数出荷)の出荷台数を、IoTデバイスが抜き、その後も10億台単位で増加が見込めるとのことです。

またアメリカではスマートホーム機器であるGoogle Homeやnest、Amazon EchoやダッシュボタンにWiFiチップが内蔵され、クラウドに接続して新しい魅力的なサービスが展開されている状況に触れ、「残念ながら日本ではまだワイヤレスチップを活用する商品はなかなか登場しておらず、アメリカや中国に遅れをとっている状況」と現状を憂えます。

国内デバイスメーカーにとってワイヤレス商品開発の敷居が高いと感じる岩田氏は、敷居を低くする方策に、3つがあると指摘しました。

(1) エンベデッドシステムとクラウドを接続する部分のハードルを、Kiiとのコラボレーションで簡素化する

IoTデバイスとクラウドへの接続には、Kiiが用意している3つのレイヤーが効果を発揮します。「モバイルレイヤー」「クラウドバックエンドレイヤー」そして「センサー&ゲートウェイ用のエージェントレイヤー」の3層のソリューションでこの部分のハードルを低くできます。

(2) 商品試作・量産の障壁になる無線特有の設計を、チップ搭載モジュールの採用でクリアする

WiFiやBluetoothの利用には、高周波設計をはじめとする専門的技術が必要なことが障壁になっている場合には、サイプレスと村田製作所が開発しているモジュールの搭載が解決になります。チップ単体の搭載を前提に製品設計するよりも、あらかじめ最適設計された通信モジュールとして実装する方が手間はかかりません。サイプレスのチップ搭載モジュールを組みこむだけで、WiFiとBluetoothの利用ができるようになります。

(3)グローバルなクラウドサービスを創出する壁となるデータの国外移転規制をKiiで乗り越える

複数の国をまたがるクラウドサービスを実現するには、データの国外移転に関する各国の規制に対応しなければなりませんが、グローバルに展開しているKiiを利用すれば、その問題を簡単にクリアできます。

特に気になるのは通信モジュールですが、「これにはサイプレスのチップが載り、チップ内のファームウェアに通信プロトコルスタックが全て入っています。認証も済んだ完全なモジュールで、これを利用するとハードウェア設計の難しい部分をほとんどスキップできます」と岩田氏は胸を張ります。しかもプロトコルスタックはAppleやサムスンのデバイスに使われているものと同等(ブロードコムの技術)で、それらデバイスとの相互運用性が保証できるそうです。

このモジュールを搭載したセンサー&ゲートウェイ製品にはサイプレス社のWICED SDKが搭載されますが、このSDKにはKiiのデバイスエージェントのAPIライブラリが全部備えられているとのことで、その上で開発したエンベデッドアプリケーションは、そのままKiiのクラウドバックエンドに接続可能になるそうです。

2 「買ってすぐ使えるIoTゲートウェイ」が登場

  • サイレックス・テクノロジー株式会社
    製品戦略室 テクニカルマーケティングマネジャー 山田喜之氏

サイレックス・テクノロジー株式会社も無線モジュールを中心とした周辺機器メーカーであり、各種の外付け製品開発も行っておられます。山田氏は、この1月にリリースしたコンパクトなLinux搭載ゲートウェイマシン「LB-100AN」を手に持って紹介されました。10cm角で厚み2.55cmのその製品は、eMMC 4GBのストレージを搭載し、ギガビットLAN、IEEE802.11a/b/g/n、USB2.0、RS-232Cと、センサー接続に都合の良いインタフェースを備えています。USBインタフェースにBluetoothドングルを挿せば、Bluetoothデバイスからのデータも多数集約できるとのこと。Kii Gateway Agentの組み込みもサポートされるので、簡単にクラウド接続が可能です。

価格は量産実績のあるハード・ソフトを適用・設定されたそうで、基本キットが定価3万5000円、追加キットが2万円。1台導入してプロトタイピングが成功すれば、その展開に必要なマシンは2万円/台で購入できるというわけです。

またその次の製品も近く登場します。「GW-100AN」と呼ばれるその製品は「買ってすぐ使えるIoTゲートウェイ」になるとのこと。LB-100ANの仕様に3Gモデムを追加したもので、IoT機器を有線/無線で接続の上、Agent とコンバータを搭載すれば、すぐにクラウドにデータを上げることができるそうです。

ユースケースとしては、オフィスのプリンタやMFPの稼働監視などのほか、成長率の著しいFAや医療分野での利用を想定されています。「FAや医療分野では無線通信は他の機器との干渉や、さまざまな遮蔽物がある中で、絶対に切れない信頼性が大切。サイレックスのAMC(Absolutely Must Connect)技術により信頼性を担保したワイヤレスIoTが実現できます」と強調されました。プロトタイピングや実証実験を短期間で実施する場合にも使いやすそうな製品です。

3 IoT活用ビジネスにはサービスやサプライの考慮も重要

  • サトーホールティングス株式会社
    エクゼクティブオフィサー戦略提携担当 小玉昌央氏

サトーホールディングはラベルなどのサプライ商品やバーコードや二次元コードなどの関連ハードウェアの開発・製造で有名な会社。IoT推進にも熱心で、「センサー・ゲートウェイを現場で利活用していくためのインテグレーションに注力している」とのことです。

小玉氏はこの3月20日からドイツ・ハノーバーで開催されたCeBIT(国際展示会)に出品したソリューションの中からリテール店舗で売上向上を図る「VISION RETAIL PLATFORM」を紹介されました。商品にRFIDタグをつけて店内とバックヤードの在庫状況を店頭でリアルタイムに確認し、最高のショッピング体験を実現するシステムを、アメリカでインテルとBTをパートナーにして運用しているそうです。同じコンセプトで国内でも展開される計画ですが、これは単なる在庫確認ではなく、新しい顧客体験を提供しているところがポイントです。

例えば「Smart Fitting Room」というアプリケーションでは、試着室に入ったお客様が、別のサイズや色の商品を試着したい、コーディネートする別の種類の商品が欲しいと思えば、試着室から出ることなく、室内の端末から店員とコミュニケーションしたり、端末のディスプレイを利用して、持ち込んだ商品に関連する適切な商品のレコメンドを行ったりすることができます。アプリケーションがコンシェルジュ役をするわけですね。お客様対応の機会損失をなくし、購入率アップや返品率削減に役立っているとのことです。利用するデータは店内とバックヤードの商品データなのですが、アプリケーション次第で素敵な顧客体験が作り出せるということです。

またレーザープリンティングの新技術も紹介されました。あらかじめ印刷部に特殊なインクを塗布してレーザーで発色させる技術です。これにより全く異なるデータのラベルを毎秒2mという驚異的なスピードで印刷できるそうです。まさに目にも止まらない速さですね。

「既存の生産ラインの最終現場に後付けでこのプリンタでの印刷や貼付工程を加えることができます。デジタルデータをn対1で大量に集めるIoTはコストがかかりますが、集めたデータを利活用して最終形態にするまでに様々な制約でスピードが落ちるのでは、投資回収が難しくなりがちです。そこでこのようなリアルタイム、オンデマンド、ユニークデータの高速印刷技術などを使えば、大量データを生かして、IoT投資の早期回収が図れるでしょう。IoTを考える時は、サービスやサプライの領域も合わせて考えられると良いと思います」。

また小玉氏は、データの生かし方について「ただ大量にデータを集めても、その後の分析などが難しくなるだけという場合もある。必要なデータをきちんととり、余計なデータを捨てることも必要」と指摘されました。 「正確で信頼できるスモールデータ」が、後の分析にも有利で、お客様にも説明しやすいというわけです。コスト効果を考える時、大切な視点だと感じました。

4 位置情報とバイタル情報による作業環境改善と安全対策

  • 株式会社セック
    開発本部 第三開発部 テクニカルマネジャー 越野大二郎氏

休憩を挟んだのち登壇されたのは、株式会社セックの越野氏です。セックは1970年設立の東証2部上場企業です。ユビキタス社会実現のためのリアルタイムソフトウェア開発を主軸に、モバイルネットワーク、インターネット、社会基盤システム、宇宙先端システムの4つのビジネスフィールドで活躍しておられます。

越野氏は「例えば人工衛星はセンサーの塊のようなもの。そのデータを瞬時に処理して衛星を制御するようなリアルタイム技術と、モバイル端末のためのネットワーク技術をかけ合わせると、新しいIoTゲートウェイをイノベーションとして提案できるのではないかと考えています」と言い、2つの事例を紹介されました。

1つ目は「位置情報とバイタル情報の収集における低コスト化」です。これは工場などでの作業員の安全や行動と作業現場の状況改善などを、IoTによって高度に、低コストに実現した事例です。典型的には、あまり他の人がいない現場での作業員の転倒や転落、意識喪失などの事故にスムーズに対応するようなケースがあります。このような場合には、作業員の位置情報やバイタル情報を紐づけてリアルタイムに検知できなければなりません。これをウェアラブルデバイスからバイタル情報は無線で直接ゲートウェイで収集し、位置情報は施設内に多数設けられた検知ポイントで捉え、検知ポイントからゲートウェイまではCSRmesh(Bluetooth利用の通信規格)でリレーする形で実現したそうです。作業員の状況はフロアマップ上に可視化されます。

2つ目の事例は「屋内外での位置検知と環境データの収集システムにおけるIoTゲートウェイ」です。これは数十万平方メートルの敷地のある工場の、屋内外の作業員の作業状況把握がしたいという要望に応えた事例。ビーコン情報の受信のためのBluetooth、屋外でのLTE通信とGPS、屋内でのWiFiが必要で、ユーザーにも受信状況が見られるようにディスプレイが必要、そしてゲートウェイの台数は減らして通信費を抑制したいという難しい要望がありました。普通に見積もるとゲートウェイの購入だけで数千万円のコストがかかる計算になりましたが、そこまでコストがかけられません。

そこでひらめいたのがスマートフォンをゲートウェイにすることでした。実際にゲートウェイ化したタブレットを見せていただきましたが、約1秒ごとに越野氏が身につけたデバイスからのバイタル情報が記録・表示され、リアルタイムの心拍値などが表示されます。これが位置情報と結びつけられますから、例えばある作業場所でみんなの心拍値が上がるとすれば、そこに緊張を強いる環境的問題があると見当がつきます。スマートフォンがゲートウェイになることでコスト面で大きな効果が期待できそうです。

最後に今後の研究開発テーマとして、「フォグコンピューティング」をあげられました。これは1ミリ秒から100ミリ秒での処理が必要で、クラウド利用では遅すぎる用途のための技術です。今後の発展が期待されます。

5 スマートフォンをエッジAIとゲートウェイに使う鳥獣捕獲ソリューション

  • 富士通コミュニケーションテクノロジーズ株式会社
    営業・マーケティング本部 シニアディレクター 箕輪剛彦氏

今回ご講演される事例は、2016年2月に富士通モバイル事業本部が分社して出来た「富士通コネクテッドテクノロジーズからの事例紹介となります。

紹介された事例は「イノシシを捕まえる」ためのスマートフォンを利用した鳥獣捕獲クラウドプロジェクトです。これはMCPC award 2016で「ユーザー部門、AI&ロボット委員会特別賞」を受賞した事業だそうです。日本には1700の市町村が有り、そのうち1200の市町村には鳥獣対策部門があり、鳥獣被害は年間数百億円にものぼるとのこと。

プロジェクトの目的は、害獣の選別捕獲と捕獲状況の把握です。出没地域に箱罠を仕掛けて捕らえるのですが、目標はイノシシだけです。タヌキが罠に入っても扉は閉じず、イノシシが入った時だけ閉じる仕組みになっています。イノシシが罠にかかったら、その情報は地域の猟友会(ユーザー)の方々に通知されます。

箱罠には、スマートフォンとその他、赤外線カメラ、赤外線センサー、ソレノイドSWを搭載した「箱罠ICTキット」が備えられます。まず何かが罠に接近したら、それを赤外線センサが検知し、キット内のインタフェースボードが起動し、USBを使ってキット内のスマートフォンの画像解析アプリを立ち上げます。画像解析アプリはキット内の赤外カメラが撮影した映像を取り込んで、イノシシの成獣の判別サイズの判別を行い、電気的に箱罠の扉を閉じて閉じ込めます。

その情報は、捕獲画像とともに近距離無線(WisReed)で中継され、LTE/3Gが使えるエリアまで到達したらクラウドに接続、転送され、クラウド側のアプリで地域の猟友会の方々に通知される仕組みです。鳥獣害の被害抑制や生息数の推定などに利用できる仕組みになっています。

スマートフォンを画像認識とIoTゲートウェイとして利用したわけですが、これを使うメリットとして「開発環境が整い開発が容易」「コストが抑制可能」「多くのAPI、外部インタフェースがあり開発に柔軟性がある」ことが挙げられました。スマートフォンは、IoT実証実験や小ロットでの使用、論理検証には使えるスキームではないかということです。

なお、スマートフォンの豊富な機能は必要ないが画像認識などに利用できるAIフレームワークを搭載可能な「スマートモジュール」の開発についても説明されました。基本的には岩田氏のご講演にあったモジュールと同様の考え方ですが、コストはかかってもAI機能を利用できる能力を持っているところが大きな違いです。「これからはエッジでもインテリジェントな処理が必要」と箕輪氏は強調しました。実際に、画像から生物の判別ができるAI機能を持った全天空カメラにこのモジュールを搭載してテストしているそうです。

(新規メンバーご紹介) サンダーソフトジャパン株式会社 代表取締役社長 今井正徳氏

最後にコンソーシアムの新規メンバーとして参加されたサンダーソフトジャパンの今井氏が簡単に自社の紹介をされました。同社は中国に本社を置き、ハードウェア/ソフトウェアともに開発を行う「テクノロジープロバイダ」であるとのこと。「当社には3千名以上の技術者がいます。例えば人手が足りないから手を貸してくれと言われれば、来週から100名規模のチームを準備するというような規模感がセールスポイントの1つになっています。中国はIoTにアグレッシブに取り組んでいるところで、その良さをうまく生かしながら日本国内のお客様のシステム開発に貢献したいと思っています」。

今回は、お1人20分という短いご講演でしたが、テーマが絞られたこともあり、聞き応え十分な内容となりました。この後は場所を移して懇親会へ。何度も顔を合わせているメンバーが多いことからか、和やかな雰囲気のまま、IoTに関する具体的な情報交換をしながらの歓談が続きました。

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