ブルーとゴールドのベイエリア: 40年ぶりの優勝です!

2015/06/30

カテゴリー:Silicon Valley Now 社会・環境

2015/6/30

Vol. 191

ブルーとゴールドのベイエリア: 40年ぶりの優勝です!


 今月は、40年ぶりの優勝にわくベイエリア、古いスタジアムに悩むベイエリアと、明暗を分けたお話です。


<第1話: 奇跡? それとも実力?>
 ワールドカップサッカー日本代表「なでしこジャパン」が、グループ首位で決勝トーナメント進出を決めた6月16日(日本時間17日)、サンフランシスコ・ベイエリアは、異様な興奮に包まれていました。
 

GS Warriors trophy small.png

 プロバスケットボール(NBA)のゴールデンステート・ウォーリアーズ(the Golden State Worriers)が、40年ぶり(!)の優勝を果たしたのですから。

 2ヶ月に渡るプレーオフの死闘の数々。最終戦は、敵地オハイオ州クリーヴランドにて「スーパースター」ラブロン・ジェイムス率いるキャヴァリアーズ(the Cleveland Cavaliers)を破ったのですから、相手に不足はありません。
(Photo by Jose Carlos Fajardo, San Jose Mercury News, June 17, 2015)
 

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 プレーオフの期間中、サンフランシスコの高層ビルも「ブルーとゴールド」のチームカラーでライトアップされ、対岸の本拠地オークランドとともにファンの誇りを示します。
 なんでも、1960年代、ウォーリアーズの本拠地はサンフランシスコだったそうで、「フォグシティー」にとっても縁の深いチームなのです。
(写真の歴史的建物は、「口コミサイト」Yelpの本社が入るパシフィックベル・ビルディング)

 そうなんです、ウォーリアーズが最後に優勝したのは、40年前の1975年。それ以来、「優勝」という言葉には縁遠く、ウォーリアーズ自体が、ちょいと知名度の低いチームとなっておりました。
 だって、サンフランシスコ界隈には、アメリカンフットボールの49ers(フォーティーナイナーズ)やレイダーズ、野球のジャイアンツやA’s(アスレティックス)、アイスホッケーのサンノゼ・シャークスや、サッカーのアースクウェイクスと、注目チームがひしめき合っているのですから。

 かく言うわたしも、ウォーリアーズには縁がなくて、バスケットボールが「観る」スポーツであることを初めて知ったのでした。

 プロの試合となると、うま過ぎて面白味に欠けると思っていたのですが、じ〜っと観ていると、必ずしもシュートが入るわけではないんですねぇ。遠くから無造作に(?)シュートしてはずすこともあるし、直近からシュートしているのに、ゴールにあざ笑われるかのごとくペッと吐き出されることもある。

 そして、まあ「一秒」の進むのが遅いこと! とくに地元チームが勝っているときには、時計の針が止まってしまって、イライラするんです。
 

Steph Curry shoots.png

 そんなわけで、バスケットボールを語る資格は持ち合わせておりませんが、ウォーリアーズの40年ぶりの優勝には、「シーズンMVP」ステッフ・カリー選手の功績が大きいのでしょう。
 素人のわたしが見ていても、彼のシュートは異常な角度でゴールに吸い込まれていって、しかも、パス出しのうまさは天下一品だというのがわかるのですから。
(Photo by Nhat V. Meyer, MN, June 15, 2015)

 そして、ヘッドコーチ一年目のスティーヴ・カー氏も忘れてはなりません。レギュラーシーズン8割を超える勝率(67勝15敗)は、NBAの新人ヘッドコーチとしては、歴代最高の勝率だとか。
 昨シーズンは17勝65敗(!)だったそうなので、その変身ぶりは目を見張るようです。
 

GS Warriors Parade small.png

 昨年10月には、サンフランシスコ・ジャイアンツがメジャーリーグ優勝を果たし、今度はゴールデンステート・ウォーリアーズがチャンピオンとなって、対岸のオークランドで優勝パレードが開かれる。

 なにせオークランドが最後に優勝パレードを味わったのは、1981年にレイダーズがスーパーボウルを制覇したときですから、実に34年ぶりの甘い味わい!
(Photo by Dan Honda, MN, June 20, 2015)

 パレードのあと、壇上でオーナーやコーチ、選手たちがあいさつをしたのを生中継で拝聴しておりましたが、先のジャイアンツと同様、「ウォーリアーズは品格(class)で勝ったんだろうな」と、にわかファンのわたしは納得。

Coach Steve Kerr at Parade.png

 「どんどん外に出て行って、時間やお金をおしまずに学校やコミュニティーと接しなさい」と、ヘッドコーチのカー氏は選手にアドバイスしていたそうで、そんなコート外の活動もチーム形成の助けになったんだろう、と想像しておりました。

 そして、どんな場面でも忘れないユーモア。ヘッドコーチからは、こんな壇上スピーチも飛び出します。
 「もう、最初にメンバー表をもらったときには、最悪だったね。みんな、何の取り柄もないし、第一、見てくれよ、このひねくれた性格の面々・・・(中略)ステッフ(カリー)やクレイ(トンプソン)には、僕が一からバスケットにシュートする方法を教えてあげなくちゃならなかったよ
(Photo by Dan Honda, MN, June 20, 2015)
 

Steph and Riley Curry.png

 こんな風に、ジョークを飛ばすヘッドコーチしかり、2歳の愛娘ライリーちゃんを会見に同席させるステッフ・カリー選手しかり、チームに悲愴感が漂わないのも勝利の秘訣かもしれませんね。
(Photo by Ray Chavez, MN, June 25, 2015)

 そんなわけで、次から次へと「お祝いムード」にひたっている、サンフランシスコ・ベイエリア。お次は、フットボールの49ers!(って、そんなわけには行かないだろうなぁ。次のスーパーボウルは地元で開かれるのになぁ・・・)


追記: ちなみに、オークランドの優勝パレードですが、レイダーズは1983年に再度優勝したものの、そのときはロスアンジェルスが本拠地だったので、パレードはあちら。そして、A’sが対岸のジャイアンツを破ってメジャーリーグ優勝を決めた1989年は、サンフランシスコの大地震のため、パレードは自粛されています。


<第2話: 形あるものは壊される>
 そんなわけで、ウォーリアーズが優勝を果たして、金色の優勝トロフィーはベイエリア各地を巡回している、今日この頃。

 ウォーリアーズをめぐっては、アリーナをオークランドからサンフランシスコに移転するプランがある中、「古いスタジアム」が物議をかもしておりました。
 フットボールのサンフランシスコ49ers(フォーティーナイナーズ)が一昨年まで使っていた、キャンドルスティックパーク(Candlestick Park)です。
 

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 昨年8月にもご紹介しておりましたが、49ersはシリコンバレー・サンタクララ市に豪勢なスタジアムを建造し、昨シーズンに「こけら落とし」を迎えました。来年2月7日には、ここで華々しく『スーパーボウル50』が開かれるのです。

 すると、今までのスタジアムはどうするの? という疑問が浮上するわけですが、サンフランシスコ市は「さっさと壊しちゃいましょう!」という結論に達し、昨年末には、解体作業に取り掛かっておりました。なんでも、跡地にはショッピングモールや集合住宅が建てられるとか。

 ところが、先日、重大な問題が発覚!
 

Candlestick Park demolition.png

 解体業者が、作業にともなう粉塵を抑えようと、事もあろうに飲料水(drinking water)を広大な解体現場に撒いていたとか!

 しかも、1時間に何千リットルという水を8週間にわたって撒き続けていた、とか。
(Photo by Karl Mondon, Mercury News, May 15, 2015)

 ご存じのように、現在カリフォルニア州は、「干ばつ(drought)4年目」という史上最悪の大試練を経験しています。シャワーは一分でも短く、庭の水撒きも週に2回と、みんなが水を一滴でも節約しようとしているときに、ホコリを抑えるために飲み水を撒いていたとは! と、解体業者は各方面から突き上げられます。

 しかも、ほんの近い場所から、市が提供する汚水再生水(recycled sewage water)を無料でもらうことができるのに、この業者は、消防車が緊急時に使う給水口から勝手に水を使っていたというのですから、地元住民は呆れて物が言えません。
 

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 問題をすっぱ抜いたサンノゼ・マーキュリー新聞が業者にインタビューすると、「だって市側は、大規模な解体作業には再生水を使っちゃダメだって言ったんだよ」との答え。
 それに対して、市の水道局は「それはまったくの誤解だよ。再生水を使ってよと奨励していたのに」と、まったく意見がかみ合いません。

 すると、翌日になって、「周辺住民の健康を鑑みて、大規模な建築・解体現場では再生水を使ってはいけない」と、一年前に市が業者に通達していたことが発覚。

 じゃあ、悪者はあんたじゃないの! と市に言いたいところですが、近くの汚水処理場の再生水は、単に殺菌してあるだけで、飲み水どころか、シャワーにも適さないので、州の規則にのっとり大規模な散布を禁止した、という経緯があったとか。
 

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 ここは、サンフランシスコ湾に突き出した、年中冷たい風が吹き荒れる場所。ですから、周辺住民の健康を守るために水を撒きながら解体することが義務付けられているのです。
 最初は、ダイナマイトで爆破(implosion)するプランだったのが、周辺住民のことを考え、ひとつひとつ壊していくことになったわけですが、これだけ水を無駄遣いするのだったら、一気に爆破する方がマシだったのでは? と、疑問が頭をよぎるのです(写真中央、海を走る道路の先から右に突き出した(茶色っぽい)小さな岬がキャンドルスティックポイント)
 

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 「水撒き問題」のあと、一時中断された解体作業はすぐに再開され、6月中旬、キャンドルスティックパークのそばを通ってみると、スタンドはほとんどなくなって、あちら側の風景が見えています(写真左、入口の聖フランシスコの像が、ひとり寂しそうに立っています)

 今年4月、ブラウン州知事は、州民に対して「2013年の水使用量から25%削減」を義務付けています。
 従わないと、給水事業者に罰金が科せられるので、自治体によっては、個人にも罰金が科せられるケースもあります。

 けれども、「水を使わない」には限度があるので、これからは、汚水の再生利用とか、海水の淡水化(desalination)とか、「水を生み出す」方法が必須となるのでしょう。
 

Mayors of San Jose and Santa Clara drink recycled water.png

 再生水と言えば、シリコンバレー・サンタクララ郡では8年前から再生水を利用していますが、今のところ、ゴルフ場や公共施設の芝生と、使用はごく一部に限られています。
 が、サンノゼ市はサンタクララ市とともに、市北部の汚水処理場の改造計画を発表し、「7年後までには、汚水すべてを再生利用する」と目標を掲げています。
(写真は、改造計画発表の際、再生水を飲んでみせるサンノゼ市長サム・リカルド氏(左)とサンタクララ市長ジェイミー・マシューズ氏; Photo by Karl Mondon, MN, April 28, 2015)

 近頃は、個人の住宅でも、シャワーやキッチンの水を再生してトイレに使ったり、庭に撒いたりと、上水道(potable water)と中水道(grey water)の両方を利用する家庭も増えてきています。中水道管は「パープルライン」と呼ばれ、紫色のパイプは、上水道と区別がつきやすいようになっています。
 

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 それにしても、渦中のキャンドルスティックパーク。以前はスポーツにコンサートと、サンフランシスコ・ベイエリアを興奮の渦に巻き込んでくれた、大きな存在。
 解体されるだけでも悲しいことなのに、解体作業でも「鼻つまみ者」となるとは・・・。

 そう、昔は、野球のジャイアンツもホーム球場としていたスタジアムなので、夏のナイターともなると、寒くて、寒くて、真冬の格好をしていないと耐えられなかった思い出があります。けれども、風は強いので、勝利のあとの花火は綺麗でしたねぇ。

 そして、秋になると、フットボール。すがすがしい9月の空は、抜けるように青く、8月よりもかえって暖かい。そんな晴れた日曜日、49ersの名選手たちが、次々と相手チームをくだしていくのを楽しみにしていたものでした。


追記: 「2013年の25%を節水」というスローガンが掲げられたとき、わたしは心の中で「ふん、属州のオレゴンから水を運べばいいじゃない!」と、うそぶいたのでした。
 いえ、実際に同様の私見を明言したカリフォルニア人もいらっしゃったのですが、その直後、ワシントン州の州知事が「干ばつ宣言」をして、西海岸の州は上から下へと未曾有の水不足であることがわかったのでした。

 汚水再生水というと、『toilet to tap(トイレから蛇口へ)』などとイヤなニックネームもつけられていましたが、この期に及んで、州民の6割近くが「汚水再生水を飲料水に混ぜてくれてもいいよ」と認めているそうです。

 もちろん、再生水の一般利用には、直接飲料水に混ぜるのではなく、地下の水源地(aquifer)に戻して地中の「自然フィルター」にかけるわけですが、それでも個人的には、海水の淡水化に一票を投じたいのですが・・・。


夏来 潤(なつき じゅん)
 

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